リスペクトという言葉 | お互い恋人ができなかったら付き合う男女のブログ~只今ロスタイム

リスペクトという言葉

ちえぞーさんのところで「リスペクト」という言葉について書かれてました。


苦手な表現/ちえぞーは気分屋なのさ。
http://flyingace.ameblo.jp/entry-090cde67b0bb524e8d8fc589536a006c.html


リスペクトと聞いて黙っていられません。
ここで音楽マニアが薀蓄を語りますよw


リスペクトという言葉は、ヒップホップを通じて日本に輸入された言葉です。
なぜリスペクトという言葉がヒップホップで使われるようになったかというと、
そこにはアメリカの歴史的、人種的な問題が含まれてると何かで読みました。
曰く、黒人音楽としての代表であるヒップホップで、黒人たちが
黒人音楽を発展させてきた先人たちへの「尊敬」。
それをリスペクトという言葉で繰り返し喧伝してきたものです。
それは人種差別の激しかったアメリカで、黒人たちの「アイデンティティ」
(これもカタカナ語だけど)の発露でもあったんじゃないでしょうか。


で、それをJ-Rapの人たちが使い出しました。
誰が使い出したかはわかりませんが、かなり早い段階からあったのは確かです。
少なくとも、96年の「証言」ZEEBRAのバースでリスペクトという単語が使われています。

日本語ラップの世界でRespectという言葉が当たり前のように使われるようになった
背景は二つあるとナギは思っています。


一つは、アメリカからヒップホップを輸入したことによる、
オリジナルの先人たちへ敬意です。
当時の日本のラッパーは、アメリカのヒップホップに衝撃を受けながら
新たな日本語ラップという、従来のヒップホップとは似ているけれども
まったく違う、新しい分野を模索しながら開拓していました。
それも、みんなヒップホップという音楽に魅せられたからであり、
少ない情報から必死にアメリカのヒップホップを研究していました。
ユウザロックは15歳で情報を求めて田舎を飛び出し、
ギドラやブッダはヒップホップを学ぶためにアメリカに渡りました。
彼らはそのような過程で、自然に本場アメリカのヒップホップに
リスペクトという感情を培っていきました。


もう一つは、80年代のアメリカで起こったイーストコースト、サウスコーストの
Dis(Disrespectの略)による抗争が殺し合いまで発展したことです。
それに対する反省として、日本でのヒップホップシーンは
初期の頃は、スチャダラなどメジャーアーティストへのDisはあったものの、
証言やさんぴんCAMPなどに代表されるように、横の繋がりの非常に強く
ピースフルなものでした。
お互いや先輩をリスペクトし、アメリカの轍は踏まない。
DisrespectよりもRespectを大事にしていこう。
そんな風潮が生まれ、リスペクトという言葉が頻繁に使われました。


そんな感じでライムスターやキングギドラなどほとんどのグループが
リスペクトという言葉を使い、ヒップホップシーンでは急速に浸透していきます。
(ライムスター「リスペクト」、K DUB SHINE「マキシマムリスペクト」など)


その精神をセールスに繋げ、ヒップホップシーンに大きな革新をもたらしたのが
DragonAsh feat.ZEEBRA ACOの「Grateful Days」だと思います。
この曲のZEEBRAのバース、「俺は東京生まれ HIPHOP育ち」の部分は
普段音楽を聴かない人でも知らない人はいないほど有名になりました。
この曲の中にリスペクトという単語は出てきませんが、
歌詞はあらゆるリスペクトに溢れ、そして客演にヒップホップ界の大御所、
ZEEBRAを招いたことからも、DragonAshの先人に対するリスペクトが
推測できます。


しかし、DragonAshはそれでもリスペクトが足りないとシーンから集中砲火を受け、
あろうことか義理立てまでしたZEEBRAからも「公開処刑」を宣告され、
しばらくの間活動休止に追い込まれてしまいます。


そして、直接リスペクトという単語を世に広めたのが
三木道山の「Lifetime Respect」だろうと推測されます。


ここから、一般人にもリスペクト、という単語が一気に浸透していったのでは
ないかとナギは考えています。


今や猫も杓子もリスペクト。
挨拶代わりにリスペクト。
角が立たないようにまずリスペクト。
パクりの言い訳にとりあえずリスペクト。
歌詞浮かばないからひとまずリスペクト。


そんな風潮がいっきに一般にも浸透し、いかにもB-BOYなカッコの人だけが
使っていたリスペクトという単語を、田舎の小学生でも気軽に使える世の中に
なってきました。


言葉は時間とともに風化します。
もはや「リスペクト」という言葉に、ヒップホップという文化をつくり上げた
黒人たちへの敬意もなければ、それを土台にしながらも日本語ラップという
まったく新しいジャンルを創り上げた人たちの「リスペクト」という言葉を
輸入したときの想いも欠片も残っていないでしょう。


もはや、リスペクトはrespectではなくてリスペクトでしかないのです。
この言葉が和製英語としてこのまま定着するのか、
ナウい一過性の言葉として死語となっていくのかはわかりませんが、
その言葉にかつての意味はないでしょう。

リスペクトは、ひとつの挨拶として気軽に使っていくしかないと思います。



ちえぞーさんリスペクトしてます。今度デートしてください。


なみリスペクトしてます。早く振られて戻ってきてください。


全ての女の子にマキシマムリスペクト。メールください。